平家物語 巻第五 「富士川 1」

2024-03-05 (火)(令和6年甲辰)<旧暦 1 月 25 日>(先勝 戊辰 二黒土星啓蟄 Tora Tove    第 10 週 第 27419 日

 

平家追討の院宣を文覚が伊豆国の頼朝に届けた頃、福原の公卿たちは会議をした。「頼朝のもとに軍勢が揃はないうちに急いで討手を下すべきであらう」かくして大将軍には小松権亮少将維盛(重盛の嫡男)、副将軍には薩摩守忠度(清盛の異母弟)と人選が決まった。その勢三万餘騎、9月18日に福原の都を立って、19日には(今は旧都となった)京に着いた。そして翌20日には、もう東国へ向けて出発である。維盛は23歳。武装したその姿たるや絵に描くにも筆も及ばないほど美しい。先祖から伝はる鎧唐皮といふ着背長は唐櫃(蓋が上に開く大きな箱)に入れて運ばれた。道中の姿は、赤地の錦の直垂に萌黄威の鎧着て、蓮銭葦毛なる馬に、金覆輪の鞍おいてお乗りになった。また、副将軍忠度は紺地の錦の直垂に緋威の鎧着て、太くたくましい黒い馬にお乗りになった。その漆塗りの鞍には金粉がまぶされてある。馬と言ひ鞍と言ひ、鎧・甲・弓矢・太刀に至るまで、みな照り輝くほどの出立ちであるので、その勇姿をひと目見ようとあたりは見物人であふれた。

今日は啓蟄