平家物語 巻第五 「五節之沙汰 2」

2024-05-17 (金)(令和6年甲辰)<旧暦 4 月 10 日>(先勝 辛巳 三碧木星) Rebecka Ruben    第 20 週 第 27488 日

 

この様子を見聞した街道沿ひ宿場の遊び女たちはみな笑ひあふのだった。「なんとあきれたことでせう。打手の大将軍は矢を一本も射ずに逃げのぼるなんてまあ、情けないこと。いくさでは見逃げをしてもうらめしいことと言はれるのに、これは聞き逃げではありませんか」また落書きもたくさんあった。都の大将軍を宗盛(むねもり)といひ、討手の大将を権亮(ごんのすけ)といふので、平家を「ひらや」と読んで、

ひらやなるむねもりいかに騒ぐらむ柱とたのむすけををとして

富士河の瀬瀬の岩こす水よりもはやくもおつる伊勢平氏かな

また、上総守が富士河に鎧を捨てたのをよんだ歌もある。

富士河に鎧は捨てつ墨染の衣ただきよ後の世のため

ただきよは逃げの馬にぞ乗りにける上総しりがいかけてかひなし

午後8時過ぎの夕陽