量子もつれ

2023-11-13 (月)(令和5年癸卯)<旧暦 10 月 1 日>(仏滅 乙亥 四緑木星新月 Kristian Krister   第 46 週 第 27306 日

 

日経サイエンスの12月号を Kindle版で買ってみた。この様な大型本は小さな端末では読むのが非常に難しいが、ラップトップ13,3インチディスプレイではなんとか読むことができる。それでも文字を拡大して読むとページを移動する時に変にジャンプされてしまったりする。お目当ての記事は「量子もつれは何を語るか」である。難しい物理の話が、初心者にもわかる様に工夫して書かれてあるのだが、それでもなほ僕にはハイレベルな内容であった。キーワードは「実在性」と「局所性」。「実在性」と言ふのは物体の性質は、人間が観測しようがしよまいがそこにある、といふことだと思ふ。僕がお月さまを眺めようが眺めまいが、お月さまはそこにあるといふことが実在性といふことかなと思ふ。それはアインシュタインの伝説的な会話の中に出てくる例への話だが、アインシュタインは局所性も大事にした。ニュートン万有引力は局所性を破ってゐる。その力は質量に比例し、距離の2乗に反比例するといふものなら、二つの物体がうんと離れてゐたときに、光の速さでも時間がかかるのに、瞬時に相手がそこにゐることがどうやって伝はるのか、といふわけである。アインシュタインは見方を変へて相対性理論を唱へた。地球は自分ではまっすぐ走ってゐるつもりだが、まっすぐであるはずの空間は実は太陽の重力によって歪められてゐた。それで、本人はまっすぐのつもりなのに、結果的に弧を描いて太陽の周りを回ることになる。それで、この考へでは瞬時に太陽の位置を知る必要がない。空間の曲がり方に沿っていけば良い。局所性とはいきなり作用が遠くへ届くものではないといふ主張であるかと思ふ。この実在性と局所性とは普遍的でどんなにミクロな世界についても成り立つものであってほしいところだが、量子力学はそれを禁じてゐる。特に不思議なのは「量子もつれ」と呼ばれる現象だ。粒子のペアがあった時に、それらがうんと遠くに離れてしまっても、一方で物理量を測定すれば、瞬時に遠く離れた片割れの粒子の状態を知ることができる、といふ風なことらしい。二つの粒子は局所的な実在論で説明できない形で同期してゐるといふ。こんな話を聞くと、昔からよく言はれる「虫の知らせ」とか「以心伝心」の様な現象が、科学的に説明される日も来るのかなと思ってしまふ。

一昨日の写真