平家物語「醫師問答 1」

2022-02-12 (土)(令和4年壬寅)<旧暦 1 月 12 日>(赤口 丙申 六白金星) Evelina Evy 第 6 週 第 26673 日

 

小松のおとど平重盛)はこのような占ひを聞いて、あれこれと不安になられたのか、熊野に参詣なされた。本宮證誠殿(しょうじょうでん)の御前で夜通し神に申し上げた。「私の父である入道相国(平清盛)のていを見るに、悪逆無道で、どうかすると主君を悩ませてしまはれます。この重盛は長男としてしきりにお諌めするのですが、私が愚かであるために父清盛は忠告を守ってくれません。その振る舞ひを見るに、父上一代の栄華も危ういほどです。子孫兄弟が父の後を継いで名を揚げ、父を顕すことは難しくなりました。この時に当たって、重盛は、その任ではないかもしれませんが、思ふことがあります。なまなか重臣の数に入って栄枯盛衰することは、良臣孝子の道ではありません。さうではなくて、名誉を捨て我が身を退いて、この世での名声をなげうち、来世での極楽浄土を願ふのに越したことはありません。ただし、凡夫の果報の卑しい悲しさには、善悪の判断に迷ふため、やはり初一念を貫くことができません。南無権現金剛童子、願はくは子孫繁栄絶えずして、仕へて朝廷に交はるべくは、入道の悪心を和らげて、天下の安全を得しめたまへ。それとも栄花が清盛一代に限られて子孫は恥を受けるのならば、この重盛の寿命を縮めて、輪のように回転する来世の苦しみから逃れさせてください。清盛の悪心を和らげるか、それができなければ重盛の寿命を縮めるか、この二つの願ひ、ひとへに加護を仰ぐものです。」と肝胆を砕いて祈念された。すると、燈籠の火のようなものが、おとどのお身体から出て、バッと消えるように見えた。多くの人がこれを目撃したけれども、恐れて誰もこのことを口にしなかった。

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気がつけばけふは写真を撮るのを忘れて、それでけふの写真は数日前のもの