平家物語「御産 4」

2021-09-27 (月)(令和3年辛丑)<旧暦 8 月 21 日> (仏滅 戊寅 七赤金星) Dagmar Rigmor 第 39 週 第 26525 日

 

清盛の四男である頭中将重衡は、この時はまだ中宮亮といふ位で、中宮職の次官であったのだが、御廉のうちからツッと出て、「御産平安、王子ご誕生であるぞ」とたからかに宣言した。法皇をはじめとして、関白殿以下の大臣、公卿、殿上人、修法の手助けをする伴僧たち、何人もの御験者、陰陽頭典薬頭、すべて堂上堂下一同にわあーッと喜びあった歓声が、門の外までどよめいて、しばらくの間はしづまることがなかった。清盛はあまりの嬉しさに、声をあげて泣いた。うれし泣きとはまさにこのことである。重盛は中宮のところへ行って、金銭九十九文を皇子のお枕に置き、「天をもって父とし、地をもって母とお定めください。お命は、昔漢の武帝に仕へた方士で長寿を保ったと云ふ東方朔にあやかり、御心には天照大神がお入りになりますように」と言って、桑の弓、蓬の矢で天地四方を射させられた。

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秋の色を愛でるのも散歩の楽しみである