平家物語「康頼祝言(やすよりのっと)1」

2021-06-21 (月)(令和3年辛丑)<旧暦 5 月 12 日> (仏滅 庚子 四緑木星)  Sommarsolstånd Alf Alvar    第 25 週 第 26427 日

 

さて、こちらは鬼界ヶ島である。流人となった身では、草葉の末に置かれた露のような命であるから、惜しいといふのではないけれども、丹波少将の舅である門脇の宰相平教盛が色々と心配してくれたのである。その領地である肥前国鹿瀬庄(かせのしょう)からいつも衣食を送ってくれたので、丹波少将はもちろん、俊寛僧都も康頼もそのお裾分けを受けて、三人とも命はなんとか生きながらへた。それにしても、ヤマト運輸も佐川急便もなかったあの時代に、遠い島までよくも毎回無事に物資を届けることができたものだと思ふ。康頼は流される時に周防室づみ(すはうのむろづみ)といふ、今で言へば山口県光市にある場所で出家して、法名を性照(しゃうせう)と名乗った。出家はもっと前から望んでゐたことであり、彼は次のような歌を詠んだ。

つゐにかくそむきはてける世間(よのなか)をとく捨てざりしことぞくやしき

(つゐにこのように完全に背いてしまった世の中を私はどうしてもっと早くに捨てなかったのだろう、悔やまれることだ)

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部屋のハイビスカスが咲いた