平家物語「大納言死去 1」

2021-04-17 (土)(令和3年辛丑)<旧暦 3 月 6 日> (友引 乙未 二黒土星) Elias Elis   第 15 週 第 26362 日

 

丹波少将・藤原成経はしばらく備中にとどめ置かれたが、どれほどかして、法勝寺の執行俊寛僧都、平判官康頼と一緒に、三人で薩摩潟鬼界ヶ嶋へ流されることになった。その嶋は都を出てはるばると浪路をしのいで行くところである。並大抵では舟の行き来もない。嶋に住む人も少ない。たまに人に会ふことはあるが、日本の内地で見る人とは様子が違ふ。色が黒くて牛のようである。身はむやみに毛で覆はれ、言葉を聞いてもわからない。男は烏帽子もかぶらず、女は髪をさげることもしない。衣裳がないので人の様に見えない。食べるものもないので、魚や動物を殺して食べるだけである。田をすき返すこともしないので米穀の類がなく、桑の木もないので絹の布もない。嶋には高い山がある。火の山である。いつも火が燃えて、硫黄が満ちてゐる。それでこの嶋は硫黄が嶋とも言はれる。雷がいつも鳴り上がり、鳴りくだる。麓ではよく雨が降る。およそ人の命が長らえられるところではない。

 

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春になって、水仙を見かけるようになった。