平家物語「烽火之沙汰 3」

2021-02-26 (金)(令和3年辛丑)<旧暦 1 月 15 日> (先負 乙巳 六白金星) Torgny Torkel  第 8 週 第 26313 日

 

小松殿で何かことが起きてゐるといふ知らせが入ると、西八条にゐた数千騎の兵共は、清盛には何の挨拶もせずに、ガヤガヤと連れ立って皆小松殿へ走って行ってしまった。少しでも弓矢を使ふことができるものは一人も残らなかった。かうなると清盛は驚いてしまった。貞能をよんで「重盛のやつは一体何だと思ってこの兵士たちを呼び寄せるのだろう。さっきこの家で言ってゐた様に私のところへ兵を差し向けるつもりだろうか。」と言った。貞能は涙をハラハラと流して、「一人の兵士も攻めてくることなどありません。何でそんなことがあるでせうか。重盛公は先ほどここであなた様に申し上げたことも今ではきっと後悔してゐらっしゃるでせう。」とお答へ申し上げた。清盛は重盛と仲が悪くなってはまづい事になるぞと思ったのか、後白河院を自分の館におよびすることを思ひ止まった。鎧を脱いで素絹の衣に着替へ、袈裟をかけて、心にもなくお経を読むのであった。

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コロナの憂ひなど知らないであろう鳥たちの囀りが空に響いた。