平家物語「少将乞請2」

2020-12-27 (日)(令和2年庚子)<旧暦 11 月 13 日> (大安 甲辰 二黒土星) Johannes Johan   第 52 週 第 26252 日

 

丹波少将成經は院の御所を出て舅の宰相(平教盛)のもとに入られた。宰相の娘は少将の北の方である。近々ご出産を控へてゐらっしゃるのであるが、今朝よりこの歎きのためにもう生きた心地もないご様子である。少将は御所を退出してからずっと涙を流しておいでであったが、北の方の様子をご覧になるともはや何もするすべがないといったご様子であった。少将の乳母に六条といふ女房があった。「お乳を差し上げるためにお仕へし始めて、この世にお生まれになった時にもお抱き申しあげました。月日の重なるにつけても、自分の年が行くことは嘆かずに、ただ成人なさることを嬉しく思って参りました。ちょっとの間だと思ってをりましたのに、はや二十一年もお側近くに離れずにをります。法皇の御所や内裏に上がられて、ご退出が遅くなるのもご案じ申し上げてをりますのに、どんな御目におあひになったのでせう。」と言って泣いた。少将は「その様に泣くものではありませんよ。教盛さまはあの様に兄の清盛さまと意思の通じ合ふお方ですから、こんな風になってしまっても命ばかりは乞い請くださるでせう。」とお慰めになるのだが、女房は人目もかまはずに泣き悶えるのだった。

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今日の散歩も夕暮れになった。