平家物語 巻第五 「文覚荒行 3」

2023-11-20 (月)(令和5年癸卯)<旧暦 10 月 8 日>(大安 壬午 六白金星)上弦 Pontus Marina   第 47 週 第 27313 日

 

修行再開の第2日に、8人の童子がやって来て、文覚を引き上げようとした。文覚は説得に応じず、散々抵抗して、引き上げられることなく修行は続いた。第3日になると、文覚はつゐに息絶えてしまった。滝壺を汚してはいけないといふ思ひからであらうか、ヘアスタイルがみづらといふ髪の結い方をした天童が二人、滝の上より降りくだり、文覚の頭のてっぺんから手足のつま先に至るまで、温かく香ばしい香りのする御手で、撫でさすった。すると、夢の心地して文覚は生き返った。文覚は「この様に救ひの手を差し伸べてくださるあなたはいったいどなたでせうか。どうしてこんなにしてまで憐れんでくださるのでせうか」と質問した。「私たちは大聖不動明王のお使ひのもので、こんがら・せいたかといふ二童子です。「文覚は無上の願ををこして、強く勇ましい修行を企ててゐるぞ。お前たちが行って協力して参れ」と明王のご命令があって、それでここにやって来たのです。」と答へがあった。文覚は声をいからせて、「それで明王はどこに居られますか」と尋ねると、「都卒天に」と答へて、雲居はるかに上がって行かれた。文覚はたなごころをあはせてこれを拝し奉った。「といふことは、私の修行を大聖不動明王までもご存知といふことか」と頼もしく思はれてきて、なを滝壺に帰って滝に打たれた。まことにめでたい瑞相があったので、かうなるともうドーパミンが全開した。吹きくる風も身にしまず、落ちくる水も湯の如し。かくてつゐに三七日の大願を遂げることができた。それからは那智に千日こもり、大峯三度、葛城二度、高野・粉河・金峯山、白山・立山・富士の岳・信濃戸隠、出羽羽黒、すべて日本国残るところなく修行して回った。そして、最後はやはり故郷が恋しかったのであらうか、都へ上ったのである。京では、およそ飛ぶ鳥も祈り落とすほどの、刃のように効験の鋭い修験者であるといふ噂がたったことであった。

今日も雪がチラホラした。