平家物語 巻第五 「早馬 2」

2023-10-10 (火)(令和5年癸卯)<旧暦 8 月 26 日>(先負 辛丑 二黒土星) Harry Harriet    第 41 週 第 27272 日

 

平家の人々は遷都といふイベントの後で早くも退屈を感じる様になってゐた。若き公卿・殿上人は「なんか事件でも起こらないかな。起きれば討手に向かふのだが」などと言ふ。それはカラ元気で、思慮の浅はかなことであった。畠山の庄司重能、小山田の別当有重、宇都宮の左衛門朝綱はこの年、禁中の警備に当たる当番で、東国から都に来てゐた。畠山は「間違ったことだな。北条は頼朝と親戚になったからなんとも言へないけれども、その他のものどもはまさか、平治の乱で朝敵となった頼朝には味方すまい。すぐに、あれは間違ひだったと知らせが来るであらう」と言った。なるほどその通りだなと頷く人がある一方で、「いやいやこれから天下の大事にならうとするところだ」とささやくものもたくさんゐた。清盛の怒りようは大変なものであった。「頼朝は本来なら死罪にすべきであったところを、池禅尼があまりに助命嘆願なさったものだから罪を流罪に緩めたのだ。それなのにその恩を忘れて、あらうことか当家に向かって弓をひくことになるとは。神明三宝もどうしてお許しになるだらうか。すぐにも頼朝は天罰を受けるであらう。」と清盛は言った。

朝の気温が2℃ほどになった。