時代の不安

2023-10-11 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 8 月 27 日>(仏滅 壬寅 一白水星) Erling Jarl    第 41 週 第 27273 日

 

平家物語と時代的に重なる部分もあると思ふが、鴨長明によって書かれた方丈記には災害や飢饉に見舞はれた様子が記録されてある。例へば「山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸をひたせり」といった具合である(ちょっとした表現でも文学的だなと思ってしまふ)。平安時代の末期は一般民衆にとってひどく不安な時代であった。その不安は現代の私たちが抱く不安と似てゐるかもしれない。そんなシビアな時代を経ながらも人々はずっと日本列島に生きてきたので、これからだって何とかなるさといふ楽観も同時にあると思ふ。ただ、現代の不安は人新世の不安だ。地球的規模での環境変化のもとに、気象変動やら地殻変動やらに見舞はれ、空も海も汚れて、方丈記の時代とは全く違った深刻な状況にをかれてゐる。戦争や武力闘争まであちこちで起きてゐる。こんな時代を生きるにはどうしたら良いのか、誰も教へてはくれない。自分で考へるしかない。鴨長明の様にポータブルな質素な家に住むのも確かにひとつの生き方だが、そのままのやり方では現代に適用できない。また、その前に凡人にはなかなかそれだけの覚悟ができない。

どんよりとした一日であったが、夕方ひととき日がさした。風つよし。