昭和の家

2019-10-30 (水)(令和元年己亥)<旧暦 10 月 3 日>(赤口 庚子 六白金星) Elsa Isabella  第 44 週 第 25828 日

 

そもそも僕の家は昭和23年に建った。僕の生まれる前年である。その建築前の6月28日に福井地震が起きた。震源地は家のすぐ近所であった。昭和20年に福井の町はB29の来襲を受けて焼けた。戦火で夜空が赤くなった様子を庭の松の根元に立って眺めたことを祖母から聞いて育った。昭和23年、戦後の復興が始まったばかりといふのに、今度は福井地震に襲はれた。僕の家も倒壊した。母は建物の下敷きになったが助けられて、まだ胎児であった僕も助かった。当時は災害にあっても、情報がなくて不安だとか、救援物資が来ないとか訴へる人はゐなかった。人々は与へられた運命をそのままに受け止めて生きた。その直後に仮設で建ったのが今の家である。水道が引かれたのは小学校の頃だ。それまでは井戸水で生活した。見上げれば板のない天井から蛇が床に落ちて来た記憶もある。すごいところに住んでゐたものだが、家のすぐ際の土手に接した田圃が遠い山の麓までずっと続く風景は今にして思へば価千金のものであった。戦後の高度成長期に周囲の家は建て替へられていった。我が家も時々少しづつ修理されたが、全面的に立て直すことを祖母が嫌った。家はつぎ足すように改装された。割と大掛かりな改装があったのは僕が家を離れた後のことである。僕が学校を卒業して働き始めた頃に、2階が増設された。2階は僕が帰郷した時に使はせてもらった。そんな古い家であるので、建築的には強度の弱い家であると思ふ。2階にはなるべく重いものを置かない様にしてゐる。災害が多発する時代になったので、いつか我が家も災害に見舞はれてしまふかもしれない。でもできるだけ労りながら使ってやりたいと思ふ。