平家物語 巻第四 「若宮出家 1」

2023-04-14 (金)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 24 日>(先勝 壬寅 九紫火星) Tiburtius  第 15 週 第 27093 日

 

平家の人々は、このたび謀反を起こした高倉の宮(以仁王)、並びに三位入道の一族、三井寺の衆徒、総勢五百餘人の頸を太刀長刀の先に貫き、高くさしあげ、夕方になって六波羅へ帰った。侍どもは勇んで大声で騒ぎ立てる。それはもう、ものすごいと言ってすまされるやうな雰囲気ではなかった。源三位入道の頸はその中になかった。長七唱が取って宇治河の深いところに沈めたので、敵の手に渡らずに済んだのである。だが、その子たちの頸はあそこ、ここより、尋ね出された。宮様の御頸は、平素宮の御所に寄りつくものもなかったので、そのお顔を知るものがなかった。先年、典薬寮の長官である和気定成が御治療のために召されたことがあるので、このものならお顔が分かるであらうと呼び出したが、目下病気ですからと言って参内しなかった。宮がいつも親しくしてをられた女房が六波羅へ呼び出された。宮の寵愛を受けて御子を産みまいらせ、最愛の方であったので、見損じることはありえない。ただひと目、見まいらせて、袖を顔におしあてて涙を流されたので、宮の御頸であることがわかった。

曇りの1日であった。天気予報では明日は晴れ。