平家物語 巻第四 「宮御最期 5」

2023-03-29 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 8 日>(先負 丙戌 二黒土星)Jonas Jens  第 13 週 第 27077 日

 

源三位入道頼政は渡邊長七唱をめして、「我が頸うて」と言はれた。唱は主の生け首をうつことの悲しさに、涙をハラハラと流して「たうていできるとも思はれません。ご自害なさったら、その後にお首をいただきませう。」と申し上げた。「なるほど」とて、西に向かひ、高い声で南無阿弥陀仏を十ぺん唱へてから、辞世の句を詠まれた。

埋もれ木の花さくこともなかりしに身のなるはてぞかなしかりける

これを最後の言葉として、太刀の先を腹に突き立て、うつぶしざまにつらぬかれて失せられた。普通の人なら、そんな時に歌が詠めるはずもないのだが、若い頃から格別に好んだ道であったので、最後の時も歌を詠むことを忘れずにおいでであった。その首を唱は引き取って、泣きながら石にくくり合せ、敵の中を人に気づかれぬように抜け出して、宇治河の深いところに沈めた。

また真冬に戻ったようなお天気であった。せっかく交換した夏のタイヤを冬のタイヤに戻す人もあったとか。