平家物語 巻第四 「宮御最期 1」

2023-03-23 (木)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 2 日>(先負 庚辰 五黄土星) Gerda Gerd 第 12 週 第 27071 日

 

平家方の先発隊三百餘騎は全員水かさの増えた宇治河を無事に渡った。その行動を指揮した下野國の住人、足利又太郎忠綱は、朽葉の綾の直垂に、赤皮威の鎧きて、牛の角のような長い角の甲の緒をしめ、こがね作りの太刀をはき、切斑の矢(白に数条の黒まだらのはっきりした鷹の羽ではいだ矢)負ひ、滋籐の弓を持って、連錢葦毛の馬(葦毛に銭を並べたような灰白色のまだらのある馬)に、柏木にみみずくの模様を打ち物にした黄覆輪の鞍を置いて乗ってゐる。あぶみを踏ん張って立ち上がり、大音声をあげて名乗る。「遠くは音にも聞き、近くは目にも見たまへ。昔朝敵将門を滅ぼし、勸賞かうぶっし俵藤太秀郷に十代、足利太郎俊綱が子、又太郎忠綱、生年十七歳、斯様に無官無位なるものの、宮に向かいまいらせて、弓をひき矢を放つこと、天の恐れ少なからず候へども(そんなことは私の知ったことではない)、弓矢の神仏の加護は平家の身の上にこそありませう。三位入道殿の御方に、我と思はん人々は寄りあへや、見参せん」と言って、平等院の門のうちへ、攻め入り攻め入り戦った。

Norrköping の Motala ström には滝になった場所もある。