平家物語 巻第四 「橋合戰 6」

2023-02-22 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 3 日>(仏滅 辛亥 三碧木星) Pia 第 8 週 第 27042 日

 

足利又太郎忠綱が真っ先に宇治川に入って行くと、上野國から大胡・大室・深須・山上、那波太郎、佐貫廣綱四郎大夫、下野國から小野寺禅師太郎、邊屋子の四郎、郎等には、宇夫方次郎、切生の六郎、田中の宗太をはじめとして三百餘騎が続いた。足利は大音声をあげて号令をかけた。「強き馬を川上に、弱き馬を川下に配置せよ。馬の足が水の底についてゐるうちは手綱を緩めて歩かせよ。馬が跳ね上がり始めたならば手綱を引き締めて泳がせよ。遅れがちなものは弓の先につかまらせよ。手を取り組み、肩を並べて渡せ。鞍壺によく腰を落ち着けて鎧を強く踏め。馬の頭が水に沈んだら引き上げよ。と言っても手綱を引きすぎて馬をひっかぶるな。深くなって水に浸るほどになったら三頭(馬の尻の方)に乗りかかれ。馬には弱く、水には強くあたれ。河中では弓を引くな。敵が矢を射かけてきても応戦するな。常にしころを傾けよ。傾けすぎて甲のてっぺんを射られない様にせよ。流れに直角に渡って水中におし落とされるな。水の流れに沿うて渡せや渡せ。」この様に指図して、三百餘騎、一騎も流さず、むかへの岸へザッと渡す。

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