平家物語 巻第四 「永僉議(ながのせんぎ)2」

2023-01-21 (土)(令和5年癸卯)<旧暦 12 月 30 日>(大安 己卯 七赤金星) Agnes Agneta 第 3 週 第 27010 日

 

この三井寺の僧たちの議論の中に、一如房の阿闍梨眞海といふ人がゐた。以前何かの折に平家のために祈祷したことのある人物である。この人は弟子同宿数十人をひきぐして、僉議の庭に進み出て次の様なことを言ひ出した。「私がこんな風に申し上げると平家の味方であるかの様にお思ひになるかもしれません。たとひさう思はれたとしても、言はせてください。今行動することは、衆徒としての義理をやぶり、我が寺の名を惜しまぬことになりはしませんか。昔は源平は左右に争って、皇室のお護りについたものでしたが、近頃は源氏の運は傾いてしまひました。平家が世を取って二十余年になります。今や天下になびかぬ草木もありません。六波羅の邸宅の有様から考へても、少数でかかってたやすく攻め落とされることはないでせう。よくよくほかに作戦を練って、軍勢をもっとたくさん集めてから、後日に攻撃をかけるべきではないでせうか」と、時刻を引きのばすために長々と会議を続けるのであった。

どんよりと曇った一日であったが、今日は急に気圧が高くなった。