平家物語 巻第四 「南都牒状(なんとてうじやう)6」

2023-01-11 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 12 月 20 日>(先勝 己巳 六白金星) Jan Jannike 第 2 週 第 27000 日

 

<興福寺から園城寺への返事の手紙の続き>

 

我らは三井寺からは離れて遠い地にをりますが、その情けを感じるものです。清盛入道が猶狂気を起こして、貴寺を攻めやうとしてゐるらしい噂もお聞きしたので、すでに用意を致してあります。十八日午前八時に大衆を決起させ、諸寺に牒奏し、末寺に下知し、軍士を得て後、こちらから通知しやうとしてをりましたところに、貴寺からの使ひがありました。数日の鬱念は一時に解散しました。かの唐家清凉山の僧侶は猶武宗の官兵を帰しました。いはんや和国南北両門の衆徒が、どうして謀臣の邪類をはらひえないないことがありませうか。よく高倉の宮の左右の陣をかためて、我らの出発の知らせをお待ちください。状を察して疑ひ恐れてはなりません。もって牒す。

  治承四年五月二十一日      大衆等

 

と書かれてあった。

小寒といふ季節の割には暖かなこの頃である