平家物語 巻第四 「永僉議(ながのせんぎ)3」

2023-01-22 (日)(令和5年癸卯)<旧暦 1 月 1 日>(先勝 庚辰 八白土星新月 Vincent Viktor 第 3 週 第 27011 日

 

すると、乗圓房の阿闍梨慶秀といふ老僧が進み出た。衣の下に腹巻きをし、大きなる打ち刀を前垂れにさし、法師頭を包んで、白柄の大長刀を杖につくといふいでたちで、僉議の庭に進み出たのである。「ゴタゴタと他のことを言ってゐる時ではないだらう。我らの本願である天武天皇は(三井寺創建の願主は天武天皇であったが、実際には滋賀の豪族大友与多が天武天皇の勅許を受けて三井寺は創建されたと注記にあり)、まだ東宮でゐらっしゃった時、大友皇子にご遠慮なさって、吉野の奥を出て大和国宇多郡を通過なさる時は、その勢わづかに十七騎であった。されども伊勢・伊賀にうち越え、美濃・尾張と進むにつれて軍勢が膨れ上がり、その勢ひで大友皇子を滅ぼして、ついに位につかれたのである(壬申の乱)。「窮鳥懐に入る、人倫これを憐れむ」と言ふ言葉もある。他の人はどうか知らぬが、他ならぬこの慶秀が門徒においては、今夜六波羅に押し寄せて討ち死にせよや」と檄を飛ばした。円満院大輔源覚も進み出る。「議論がどうでも良いことに空回りしてをる。夜はどんどん更けてしまふぞ。急げや進め」と叫んだ。

久しぶりに氷点下5℃まで下がって、Stockholm への道中に数々の美しい樹氷を見た。