平家物語 巻第四 「競(きをほ) 4」

2022-12-05 (月)(令和4年壬寅)<旧暦 11 月 12 日>(仏滅 壬辰 五黄土星) Sven 第 49 週 第 26963 日

 

前右大将宗盛卿は添へられた歌に何の返事もしなかった。「ああ、良い馬だ。馬はまことに良い馬だ。されども主が出し惜しみをしたのが憎い。馬の尻に「仲綱」と焼印を押せ」と言ふので、焼印が押されてうまやにたてられた。客人が来て、「有名な名馬を見たいものですな」と言ふと、「その仲綱めに鞍おいて引き出せ。仲綱めに乗れ。仲綱めを打て。なぐれ。」などとさんざんに言ふ。このことを伝へ聞いた伊豆守は、「わが身にかへても大事にしたかった馬なのに、権威にかなはずに盗られてしまった。それだけでも残念なのに、馬ゆへに仲綱が天下の笑はれぐさとなってしまふのは我慢できない。」と言って怒りをあらはにした。三位入道はこれを聞き、伊豆守に向かって、「平家がわれわれ(頼政たち)をいくら辱めたとて、どうせこいつらに何ができるものかと侮って、そんな馬鹿なことを言ふのだらうよ。さういふことなら、命生きても何にならう。良い機会を狙ってやらう。」と言って、個人の恨みとしては計画しないで、宮に御謀反を勧めたのだと、のちにはそのやうに人々は言ふのだった。

この頃は家の周りを散歩するだけが運動。