神話の中の警鐘

2022-05-06 (金)(令和4年壬寅)<旧暦 4 月 6 日>(先負 己未 八白土星) Marit Rita 第 18 週 第 26756 日

 

テンミニッツTVをたまに見ることがある。京都大学名誉教授の鎌田東二先生の世界の神話の話が面白かった。北欧神話と日本神話に登場する神の共通点などを説明されてゐたが、さらにどの国の神話にしても、その国土が持つ自然現象を反映するものだといふご指摘が面白かった。日本の場合は、火山のはたらきが神話に暗示されてゐるといふことである。このことを最初に指摘したのはおそらく寺田寅彦で、その著書である「神話と地球物理学」といふ本をかなり丁寧に引用されてゐた。例へば「国生みの神話」は海底火山の噴出、地震による海底の隆起の現象などが元になってゐるとのことである。出雲風土記には、神様が陸地の一片を綱で引き寄せる話があるが、ウェゲナーの大陸移動説を彷彿とさせる。ヤマタノオロチは火山から吹き出す溶岩流の光景を連想させる。「身ひとつに頭八つ尾八つあり」は溶岩流が山の谷や沢を求めて合流あるいは分流する様子を表してゐる。また、天照大神が、神聖な機屋にゐて、神に献上する御衣を機織り女たちに織らせてゐたときに、速須佐之男命がその機屋の棟に穴をあけて、天の斑馬を逆剥ぎにして落とし入れたところ、機織り女はこれを見て驚き、死んでしまった。といふ話も、火口から噴出された石塊が屋をうがって人を殺したのではないかと推察される。その後に続いて天照大神が天の岩戸を閉じて中にこもった話、「高天原皆暗く、葦原中国ことごとに闇し」は日食ではなくて、噴煙降灰によって天地が暗くなったのではないかと、寺田寅彦は言ふのである。言はれてみれば納得。大化の改新から現代までの日本の歴史はたかだか1500年程度かもしれないが、神話の時代は多分1万年以上あると思ふ。その間に原始の日本人は大きな災害を経験して、それが神話に盛り込まれたのではないかと想像されるのである。それほどの長いスパンでみれば、現代に災害の再来はありえぬ話ではない。神話の形をとって、後世の人々にメッセージを伝へてきたのではないかと思はれる。

Västra klockstapeln