平家物語 巻第四 「競(きをほ) 3」

2022-12-04 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 11 月 11 日>(先負 辛卯 六白金星) 2:a advent Barbara Barbro 第 48 週 第 26962 日

 

源三位入道の嫡子伊豆守仲綱は「その馬は確かに持ってはゐるのですが、最近あまり乗って馬を痛めてしまひました。それで休養させやうと思って、田舎へつかはしてあります。」と返事をした。「さういふことなら仕方ありませんな」と使者は帰って、しばらくはそのままで済んだのであるが、多く並み居たる平家の侍どもが、「エーッ? その馬は一昨日までは居たよ。昨日も見たぞ。いや今朝だって庭前で馬を乗りならしてゐたぞ」などと、言ひだしたものだから、「さては惜しんで言ったのだな。憎いやつだ。行って馬をもらってこい。」と言ふことになって、家来をかけて行かせた。文を渡し、それが一日のうちに五、六度、七、八度と繰り返されて、矢の催促となった。源三位入道はこれを聞いて伊豆守仲綱を呼び寄せ、「たとい黄金でできた馬であったとしても、それほどに人の乞わうものを惜しむべきではあるまい。すみやかにその馬を六波羅へつかはしなさい。」と諭した。伊豆守仲綱は仕方がないので、一首の歌を書き添へて、馬を六波羅へつかはした。

恋しくは来てもみよかし身にそへるかげをばいかが放ちやるべき

2:a advent 我が家の台所の小さな adventsljus の2本目にも火を灯した。