平家物語「法印問答 2」

2022-04-12 (火)(令和4年壬寅)<旧暦 3 月 12 日>(友引 乙未 二黒土星) Liv 第 15 週 第 26732 日

 

その地震から1週間が過ぎた11月14日のことである。いつもは福原に居られた平清盛だが、何を思はれたか、数千騎の軍兵を雲霞のように従へて、都に入って来るぞと噂がたった。京中の人々は、はっきりと聞いたことではないのだが、上も下も恐れおののいた。誰が言ひ出したのやら、「入道相國は皇室に対して積もる恨みをはらす行為に出るだろう」といふ噂もたった。関白の藤原基房も、内部から情報があったのか、急いで宮中に参内された。「今回の相國禅門入洛のことは、ひとへにこの基房を滅ぼさうとする計画に違ひありません。どんな目にあはされることでせう」と申し上げれば、高倉天皇はたいへん驚かれて「あなたがどんな目にかあふことになるなら、私がそんな目にあふことと同じではないか」とお涙をお流しになった。恐れ多いことである。天下のまつりごとはもともと天子様と摂政関白とのおはからひで決められるべきなのに、これはどうしたことであろう。天照大神、春日大明神の神慮のほども計り難いことである。

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