平家物語「法印問答 1」

2022-04-11 (月)(令和4年壬寅)<旧暦 3 月 11 日>(先勝 甲午 一白水星) Ulf Ylva 第 15 週 第 26731 日

 

平清盛は長男重盛に先立たれて、何かにつけて心細くおなりになったのか、福原へ急いで帰り、門を閉めて家に閉じこもってしまはれた。その年(治承3年、1179年)の11月7日の午後8時ごろ大きな地震があった。陰陽頭安倍泰親はすぐに内裏に駆けつけた。「今回の地震は、うらなひの文章の示すところによると、その慎みは軽くありません。陰陽道の三つの経典のうち、混器経の説を見ますと、「年であればその年のうちに、月であればその月のうちに、日であればその日のうちに、災厄が起こると出てをります。これはまさに緊急事態です。」と言ってハラハラと泣いた。このことを上皇に取り次ぐ係の人も色を失ひ、後白河院も大変お驚きになった。若い公卿や殿上人は、「あの泰親殿の常軌を逸した泣き方はどんなものだろう。きっと大したこともないのにさ」と言ってみんなで笑ひあふのであった。けれども、この泰親様は花山・一条天皇時代からの陰陽博士の血統を受け継ぐ人で、天文学は根本を極め、推論することにかけては手のひらのものを指すように正確であった。間違へることがないので、「さすの神子」と呼ばれるほどの人である。この人の身に雷が落ちかかった時にも、雷火のために狩衣の袖は焼けたけれども、その身は無事であったといふ。上代にも末代にもこれほどの人は滅多に居ない、そんな泰親様であるのだ。

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今日は暖かかったが、時々雲がかかった