遠い山なみの光

土 旧暦 1 月 2 日 友引 庚辰 五黄土星 Alexandra Sandra V07 25211 日目

今日は何もする気がなくて一日中家に居た。「遠い山なみの光」(カズオ・イシグロ著、小野寺健訳、ハヤカワ文庫)を人から借りてあったので、それを読んだ。読後すぐに深い感動はなかったけれども、巻末の解説「日本的心性からの解放」を読んだ時、スッと腑に落ちるものがあった。この解説によって、この本の価値がジワリとこれからわかるかもしれない気もした。そんな解説を書いたのは池澤夏樹氏。英語で書かれた日本人の会話を和訳する上で、それは訳業といふより創造的、作家的な営みであったらうこと、その成果を池澤氏は高く評価した上で、実は英語のままでもその人物像は正確に伝はることを指摘した。僕は英語でこの本を読んでないが、そのセリフは拍子抜けするほどメッセージを伝へるだけの、だけど、だからこそ明晰であるらしいのだ。わかる気がする。何かの折に「こんなこと日本人でなきゃ分からないよね」と囁く自分と「さうかな」と疑ふ自分とが居た。「日本人でなきゃ分からない」と決め込むのは日本人の独りよがりかもしれないと思ふことも過去にあったので、この部分を読んだ時、スッと腑に落ちたのである。それは僕の感違ひかもしれないのだが、「何が」「どうした」といふことをなるべくシンプルに記述する努力をすれば、言葉は意外に通じるものかもしれないとも思った。