二つの CD

金 旧暦 9月 29 日 先勝 戊申 七赤金星 Naemi Naima V46 25119 日目

CD は一般には Compact Disc の略だが、Cash Dispenser の略でもある。いづれも昭和の時代の技術である。それまで、30 cm の LP レコードで聴いてゐた音楽が、ディジタル技術の発達で12 cm の CD で聞くことが出来る様になった。その当初は、大いなる技術革新だと思ったものだった。 CD player も高価なものであった。また、カードを挿入すれば現金が出て来る cash dispenser も世の中に登場した時は驚いたものだった。機能が拡張して今は ATM と呼ばれる。だが、この二つの画期的な技術革新の CD はいづれも過去のものにならうとしてゐる。今でも音楽を CD で聞くことはあるが、雲の上に預けてある音楽を聞く方が主流になった。僕は CD を家で聞くよりも自動車の中で聞くことが多い。これからの自動車には CD player も装備されなくなると思ふ。一方、世の中がキャッシュレス社会に移行することで、cash dispenser の方もあまり利用することがなくなった。お金もまた雲の上に預けてしまったのである。二つの CD は役目を終へようとしてゐる。身の回りからは、現金が消え、音楽の媒体が消え、本が消えようとしてゐる。食べものさへも必要な時にコンビニから買って来ることになれば、身の回りには何もない生活になる。そしてある日突然、雲が消えた日に、人は何もできなくなる。僕らは何と恐ろしい世界に住んでゐるのだらう。