サムライクリーン

火 旧暦 4月18日 先負 丙午 一白水星 Ivan Vanja V21 24566 日目

僕の住むアパートは集合住宅。建物の1階に4世帯、2階に4世帯、併せて8世帯の構成である。屋根のどこかに換気用ファンがある。台所のレンジフードと浴室の上部壁との2か所から屋外に常時換気される。そのファンの強さは強弱の2段階がある。この他にレンジフード自身にも空気排出ファンとフィルターが内蔵されてゐて、こちらのファンには3段階の強さ調節がある。壁から先は排気ダクトに繋がってゐて、そこは僕らでは掃除ができない。そろそろ掃除が必要な時期になると管理組合から通知が来る。今日はその掃除のために業者が入った。二人の男がやって来た。一人はえらく背が高い。殆ど2メートル近くある。それだけの背丈があると、高いところにあるものにもヒョイヒョイと手が届き、実に手際よく作業を進める。調理台の上にはレンジフードが見えないようにその手前に奥行きの狭い化粧棚が設けられてゐるのだが、その棚を支へる上部のビスを外す時だけには流石に脚立を使った。「僕は背が低いからね、脚立が要るんだよ」と面白いことを言った。この人は僕と同居人を見るなり、「君たちは日本から来てるのかね」と驚いた様に聞いた。良く分かったねと僕の方が内心驚いた。その聞きぶりが如何にも懐かしいものに出会った時の様な好意に満ちてゐて好感が持てた。二人の男は、先にブラシのついた10メートルもある長い管をダクトの穴から差し込んで手際よく掃除をしてくれた。レンジフードも掃除してくれる筈だったが、そこはたまたま僕が先日掃除したばかりのところであった。ファンとフィルターを外してもそれらは全く汚れてなかったので、驚いて「これはサムライクリーンだね」と言った(スウェーデン語で「サムライレーン」と言ったのだが)。初めて聞いた言葉だが良い言葉だと思った。あたかも剣豪が人知れず毎日腕を磨く時の様な心をお手本にして毎日掃除ができたら、僕の人生にも「サムライクリーン」が実現するかもしれない。そんなことを思った。