オバマ大統領の広島訪問

水 旧暦 4月19日 仏滅 丁未 二黒土星 Urban V21 24567 日目

アインシュタインは運動する物体の電気力学を研究した時、その結論として E=mc2 の等式に辿り着いた。それは高校物理でも習ったのかもしれないが、僕の記憶からは消えてゐて、「質量とはエネルギーである」といふことに衝撃を受けた思ひ出は大学に入った後であった。けれども、その式が具体的に自分の生活にどんな風に関はるのかについては全く想像がつかなかった。万物が原子から成ってゐることを知識としては知っても、その奥に原子核があって、もしそれが分裂する様な事が起きると、新たにできた小さな原子たちの原子核を構成する中性子の数は元の大きな原子の中性子の数より少なくてすむ。そのために余剰中性子が飛び出して、反応の前後でわづかに質量が減ることになるが、その分が巨大なエネルギーとして解放されてしまふ。 E=mc2 の等式からそのことにまで一気に理解が進むためには想像してみるハードルの高いステップが要るのだと思ふ。現代に生きる僕たちは原爆の恐ろしさなどを知ってゐるから、エネルギーが解放される式の意味を本当のこととしてあまりにも簡単に受け入れてしまふけれども、まだ原爆が発明されなかった時代の一般の人たちには、その式の意味が分からなかったのだと思ふ。それがわかる様に誰かがどこかで実演してしまふかもしれない。アインシュタインは、誰かが原爆を発明してしまふ時代の危機を感じて、ルーズベルト大統領にあてて書簡を送り、アメリカによる原爆開発を進言する。その結果は日本の市民にとって目を覆ふばかりに悲惨なことになった。オバマ大統領は現職の米大統領として今度初めてその広島を訪れる。僕は一日本人として思ふことがある。歴史に「もしも」は許されないのであるが、もしも日本が先に原爆を開発してゐたなら、あの時代の日本の雰囲気からして、大本営はどこかの敵地に原爆を落とすことを全く躊躇はなかったのではないか、といふ事である。もしもさうなってゐた場合、僕らは別な意味で世界の中で苦しまなければならなかったのだ。勝者である事、敗者である事、加害者である事、被害者である事の単なる立場を超えて、戦争の恐ろしさを省みなければならないと僕は切に思ふ。