長い金曜日

金 旧暦3月20日 仏滅 丁未 五黄土星 Långfredagen Allan, Glenn V16 22718日目

スウェーデンから離れて暮らしていると、日常の忙しさの中にうっかり忘れてしまいそうな危うさがあるが、あらためて暦を見ると今日は長い金曜日である。しかも仏滅と重なった。今年は彼岸を過ぎても寒い日が多く、被災地の人たちには寒く長い日々であった。が、ようやく今日などは暖かくなった。福島第一原子力発電所の20km以内は今日から警戒区域と指定され、立入禁止となった。自分の故郷に当分帰ることができなくなった人たちは本当にお気の毒としか言いようが無い。どんな文明にもリスクは必ずつきまとう。完璧に安全な文明などありえない。非常に小さな確率で色々な事故はこれからも必ず起きる。その小さな確率を許容して生きるのが高度な文明との付き合い方ではないかと僕は思う。だが、実際に眼の前にそれが起こってみると、文明の翳の部分が一部の人たちだけにふりかかることがなんともしのびない。住民の怒りはよく分かる。けれども、避難所に謝罪にまわった東電社長に向かって怒りをあらわに抗議しても、何も解決しないと思う。世の中に起こる事故の中には、管理者の怠慢によって起こるものもあるし、そういう場合は厳しく管理者が問われなければならないが、今回の大津波の場合は、管理者の怠慢に全てを帰することは厳しすぎると思う。「あなたたちは安全だと言って来たではないか」という科白もよく聞くが、「原子力は本当に安全だろうか」と誰よりも真剣に反芻し、考えてきたのは実は電力会社自身であったこともまた事実なのである。住民のひとりひとりが、自分もまた文明の恩恵の享受者である以上、自分には何も悪いところは無い、悪いのは東電ひとりだと頭ごなしに信じ込むことはどんなものかと、住民の人たちへのシンパシーと同時に、僕は思ってしまうのである。