「太陽を創った少年」読後感

2023-07-10 (月)(令和5年癸卯)<旧暦 5 月 23 日>(先負 己巳 四緑木星)下弦 Andrè Andrea   第 28 週 第 27180 日

 

昨日までの3日間のブログは Taylor Wilson の小型核分裂炉といふことで書いてみたのだが、そもそもTEDの動画を見るきっかけとなったのは、Tom Clynes 著・熊谷玲美訳 早川書房の「太陽を創った少年」を読んだからである。この本は以前から気になってゐたのだが、電子版では出版されてゐないので、先日、日本に行った時に買ってスウェーデンに持ち帰った。 Taylor Wilson の少年時代のことが書かれてあって、数々の冒険の中には「エッ、そんなことして良いの?」とハラハラするエピソードがたくさん出てくる。実に危険な実験も出てきて、普通の子が真似をされたら困るなと心配になった。もし自分の周囲にそんな子がゐたらきっとやめさせると思ふ。99%まではそれで良いのだが、1%は、もしかしてこの子には普通の子にはない才能があるのかもしれない、さうならその可能性の芽を伸ばしてやらないといけない、と思ってみることも大事だと思った。この本では、特別な才能を持って生まれてきた子が少年時代をどんな風に過ごして来たかがよくわかる。オバマ大統領と会見した時の様子もあったが、以前、オバマ大統領が演説で STEM教育の重要性を強調した時のことがふと思ひ出された。この本は単にひとりの少年の物語であることを越えて、ある子が特別な才能を持ってゐることに気づいた時、親や先生はどんな風に接したら良いのかについても問題を投げかけてゐる。もっと広くは、本来教育といふものは、ひとりひとりが持って生まれた性質を大事にすべきものであるのに、決まった教材で一斉に授業をすることへの批判と、さうせざるを得ない現実や、もし才能別にクラス分けすると、ついていけない子の親からは不平等と言はれてしまふ場合のこともあるなど、教育のあり方についてかなりページが割かれてゐた。ともあれ、その少年を型にはめやうとせず、自由に羽ばたいて天才の芽をのばしてやりたいとされるご両親のご苦労や、本人の情熱を支へやうとする周囲の人たちの努力が、天才児の出現の陰にあることがよくわかった。世の中には才能に恵まれながら生まれて来たのに、その芽を摘み取られてしまふ場合もきっと多くあるのだと思ふ。

町まで行ったら、Vallarna の前の池の蓮の花が見事だった。