Taylor Wilson の小型核分裂炉(3)

2023-07-09 (日)(令和5年癸卯)<旧暦 5 月 22 日>(友引 戊辰 五黄土星) Jörgen Örjan   第 27 週 第 27179 日

 

では水蒸気でタービンを回すのでなければ何で回すのかといふと、超臨界のCO2やヘリウムガスで回す。小型モジュール式原子炉であるので出力は100MW以下。従来の原子力発電では発生した熱量の約3分の1しか電気として取り出すことができなかったが、この方式では約2分の1まで取り出すことができる。このタイプの原子炉はトリウム溶融塩炉と呼ばれる。核分裂生成物を抜きながら運転することができて、最大30年連続運転可能といはれる。これまでの原子炉が1年半ごとに燃料交換してきたことをおもへば、起動停止運転なしで連続30年動いてくれるのは夢の様な話である。原子炉内に燃料棒はなく、液体トリウムは自然循環し空冷可能であるため、冷却機能喪失時も安全に停止する。これまでの様な種々の冷却水注入装置や余熱除去装置やディーゼル発電機も不要となる。トリウム燃料サイクルでは天然トリウムが中性子を吸収してウラン233に変換される。ウラン233が核分裂するとまた中性子が放出されて連鎖反応が起きる。これまで日本の原子力はウラン・プルトニウム系列に沿って開発が進められてきたが、高速増殖炉の開発が難航してゐる現状を思ふと、別な系列であるトリウム燃料サイクルに着目する提案は示唆に富む様な気がする。トリウム溶融塩炉で使用する燃料は核兵器の爆弾を希釈して燃料とすることができるといふ。冷戦時代から核大国で大量に作られてしまった古い核爆弾はどこへどの様に処分すれば良いのか誰もが困ってしまふ難問であるが、それらを希釈すればトリウム溶融塩炉で燃やして使ひ切ることができるのだといふ。この小型モジュール式原子炉は原子炉の部分がすっぽり地下に埋められるので、核拡散防止、テロ対策の警備といふ面からも大変に大きな利点がある。原子炉を冷やすのに近くに海がなくても良いし、巨大な冷却塔も不要である。SDGsに準拠してカーボンを全く出さないし、どんな天気であっても安定して発電してくれる。言ってみれば、充電なしに10万世帯の電気を30年間供給し続ける巨大な電池の様なものだ。それは工場で生産されて、世界中のどこへでも運ばれて、設置されると発電が始まる。発電コストは今の原子力発電より格段に小さく抑へられる。今日のブログは Taylor Wilson の「僕のラジカルな計画ー小型核分裂炉で世界を変える」といふTEDの動画に基づいて書いた。10年前の動画なので、今はもっと開発が進んでゐると思ふ。どこまで進んでゐるのかはよく知らない(多分、米・中で進んでゐると思ふ)が、僕にとってはこの動画は全く新しい知見であったので、ともかくもブログに書いた。

盛夏の散歩だが、気温は25℃くらいか。