Taylor Wilson の小型核分裂炉(1)

2023-07-07 (金)(令和5年癸卯)<旧暦 5 月 20 日>(赤口 丙寅 七赤金星)小暑 Klas   第 27 週 第 27177 日

 

世の中には情報が溢れてゐて、何を見、何を聞き、何を信じて良いのかわからないことがある。それで、僕はなるべく動画やSNSを見ない様にしてゐる。だが、今日たまたま目にした動画は大変に印象的であった。いまや世界中の有名人となってゐる Taylor Wilson の動画で、「僕のラジカルな計画ー小型核分裂炉で世界を変える」といふタイトル。アメリカにはTED (Technology Entertainment Design) といふ団体があって折々講演会などが催されるのだが、その講演会の配信動画である。もう10年も前の動画だが、何も知らなかった僕には全く新鮮なものであった。そもそも Taylor Wilson といふ人は14歳にして自宅のガレージで核融合炉を作ったことで有名になった人である。なので、核融合炉に関する講演ならわかるのだが、その人が核分裂炉について語るのでオヤと思ったのだ。だが、そのココロはすぐにわかった。いかに核融合炉を実現したと言っても、核融合発電までの道のりはまだまだ長い。それまでのつなぎの技術として従来からある核分裂炉を、従来とは全く違ふ全く安全な方法で開発して普及させてはどうかといふ提案なのである。細かいところは僕にはわからないこともあり、すべてを鵜呑みにはできないが、方向としてはすごく良い点をついてゐると思ふのだ。福島の原発事故以来、原子力の「ゲ」の字を聞いただけで拒否反応を示す日本人は多いし、国や電力会社は自分たちの都合や目先の利益だけ考へて行動するものとしょっぱなから決めてかかる人も多い。最初から悪者とみなす人もゐる。一方で、大局的な見地からといふより地元産業のとりあへずの潤沢を求めて原子力を求める声もある。いづれも考へ方の枠が狭い。その様な意識レベルの議論をいくら重ねても、その先に将来の日本のエネルギーがあるとは到底思へない。現在の日本の原子力政策のなんと頼りなく先が見えないことか。このままでは日本はどうなってしまふのだらう。新技術を駆使した新しい原子力の活用を視野に入れて、もっと真に将来を思ふ気持ちから議論がなされるべきだと思ふ。現代の若いエリートたちはこぞってIT産業をさしてなだれうつが、大事なエネルギーの供給の方はどうなるのだらうとかねてから僕は心配であった。だが、 Taylor Wilson といふ天才の出現で状況は救はれるかもしれない。頭の切れる人たちは知識をずるく使って人を騙したりする例を多く見るのだが、 彼の場合は、その素晴らしい才能を社会のためにつくさうとする心意気が感じられて、未来が明るい。それで、心をうたれるのだ。

今夜は七夕。北欧の夏の夜は暗くならないので天の川を探すこともない。