一乗谷朝倉氏遺跡

2023-05-31 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 4 月 12 日>(先負 己丑 二黒土星) Petronella Pernilla  第 22 週 第 27140 日

 

新沼謙治の歌に「ふるさとは今もかはらず」といふ歌がある。この歌には「ふるさとだけはいつまでも変はってほしくない」といふ願望がこめられてゐるかなと思ふ。実際に何年もの年月を経たのちにふるさとに足を踏み入れた時、それさへも今では昔のことなのだが、僕の心の中には幼少の頃のふるさとの思ひ出が去来して泣き出しさうなほど興奮したものだった。けれども少し慣れてくると、コンビニがあったり、高速道路があったり、周りはすべて現代化されてゐて、僕の期待は小さく裏切られたことを覚えてゐる。それは当たり前の話で、自分ひとりは都会にあって文明の利便を享受しながら、ふるさとだけは昔のままであってほしいといふのは虫の良すぎる話である。ふるさともまた成長せねばならない。ところで今日は高校時代の友達が奥さんと誘ひに来てくれて、僕の方も同居人と一緒に近くへドライブに連れ出してくれた。一乗谷朝倉氏遺跡を訪ねたが、そこは豊かな緑に囲まれた谷で、田植えを終えたばかりの水田も美しく、川の水も勢ひが良かった。その様子はまことに「ふるさとは今もかはらず」を思ひ起こさせてくれる場所であった。青々とした山が心を励ましてくれる。この地では数十年にわたって地道に発掘が行はれ、その出土品の研究によって、戦国時代の人々の暮らしの様子が明らかにされてきてゐる。最近、「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」ができたので、そこにも入ってみた。実際の石敷遺構を覆ふやうに博物館が建てられ、細部にまで丁寧な仕事のあとが感じられて、よくもこんなに立派な設備を設計したり施工したりできるものかと、驚くばかりであった。ちょっとしたふるさと発見の一日であった。案内してくれたご夫妻に感謝。

少し奥に一乗滝がある。佐々木小次郎のツバメ返しを編み出した場所との伝説あり