アインシュタインの偉大さ

2023-03-15 (水)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 24 日>(先勝 壬申 六白金星)下弦 Kristoffer Christel 第 11 週 第 27063 日

 

改めて言ふことでもないが、アインシュタインは本当に偉大な人であると思ふ。1905年に光量子仮説を発表した。光は波動の様にふるまふが粒子の様にもふるまふことを言った。量子力学の黎明期にその分野で重大な発表をしたのである。同じ年、ブラウン運動(植物の花粉が水中で不規則に運動する現象)は熱運動する媒質の分子同士がぶつかって引き起こすものであることを言った。「万物は原子でできてゐる」ことを説いたのは古代ギリシャの哲学者デモクリトスであった。その考へは長く仮説とされてきたが、19世紀になりボルツマンが登場してから脚光を浴びることになった。それでも原子の存在が実際に確かめられたわけではなく、仮説にとどまった。アインシュタインブラウン運動を考察したことにより、それまでは仮説であった分子や原子の存在が実験的に証明された。また同じ年に特殊相対性理論を発表した。時間と空間とは切り離せないものであることを言ひ、ここにニュートン力学が根本から書き換へられた。さらにエネルギーと質量とは同じものであることを引き出した。これらのどれひとつをとってもまことに画期的で、この様に重大な発見を立て続けに発表した1905年は奇跡の年と呼ばれてゐる。さらに特殊相対論に重力が作用した場合を調べて1915年に一般相対性理論として発表した。地球は直進するつもりで運動してゐるのだが、空間が太陽の重力で歪むので、結果的に太陽の周りを回ることになる。光も自分では真っ直ぐ進むつもりだが重力のあるところでは曲がってしまふ。それはブラックホールの存在を示唆し、現代宇宙論の端緒となった。これだけたくさんの仕事をしたアインシュタインだが、量子力学に関してはニールス・ボーアコペンハーゲン派の人々の解釈に満足しなかった。コペンハーゲン派の解釈が量子力学の現象をうまく説明できるのなら、もうそれで良いではないか、と普通の人は思ふのだが、アインシュタインには引っかかるものがあって、納得しなかった。そのことで、アインシュタインは多くの人たちから批判されてしまふのである。だが、あそこまで偉大な業績を上げた人が、己の業績に慢心することなく探究を続け、ついに最後までその解釈に納得しなかった姿勢は、さらなる感動を呼び起こす。それは個人的な思ひ込みを固執する頑固さでなく、自然の言葉に素直に耳を傾けようとすることから来る態度だと思ふ。あるいはそこに何か深遠なものが潜んでゐることはないだらうかとフッと思ってしまふのである。

十日近くも雪に埋もれてどうなったかと思ってゐたが、解けるとちゃんと白い花が咲いた。