科学と技術の間

2022-04-06 (水)(令和4年壬寅)<旧暦 3 月 6 日>(友引 己丑 五黄土星) Vilhelm William 第 14 週 第 26726 日

 

アインシュタイン特殊相対性理論を発表したのは 1905年。有名な公式 E=mc2 が発表されたのはその2年後の 1907 年である。物理学者たちはこの公式から直ちに、もし原子核の中に秘められたエネルギーを取り出すことができれば少量の物質から莫大なエネルギーが得られることを予見した。その後、1938 年になって、ウランに中性子を照射することで核分裂が起きることが発見された。発見したのはオットー・ハーンとされてゐる。ノーベル賞も受賞したが、その現象は核分裂によるものに相違ないと、最初に正しい判断を下したのはオーストリア出身の女性科学者リーゼ・マイトナーであった。この発見は原子爆弾が出現する可能性を示唆するもので、それがナチの手によって開発されては大変なことになるといふことで、1939 年、アインシュタインアメリカのルーズベルト大統領に手紙を書いた。それがきっかけとなって、マンハッタン計画が始まる。1945年7月16日、ニューメキシコ州アラモゴードの丘に人類初の核実験があり、続く8月6日と9日に広島、長崎の悲劇を迎へるに至る。科学上の発見からそれを応用した技術上の実現までの期間は斯様に短い。人々の中には、人間はどうしてそんなことを発見するのだと言って科学の進歩を悪く言ふ人があるが、それは違ふと思ふ。知的探究心そのものは純粋で高邁な精神であると思ふ。原爆を求めて研究したのではなくて、この世界のことを調べて何かを発見したら、それが原爆になってしまふ可能性に気づいたのである。純粋な科学上の発見があった時、それを如何に利用するか、その善悪の判断はまたおのずから別問題であると思ふ。そのような欲望にブレーキをかけるのは非常に難しい問題であるけれども、人間はそんなこと知らずにゐた方が良かったのだといふ短絡的な見方には賛成できない。こんなことを書くと、「お前は原爆の本当の悲惨さを分かってないからそんなことを言ふのだ」と叱られさうな気がするが、それとこれとは別問題だと思ふ。何かを知ってしまった時、ではどう動くべきか、が大きな問題なんだと思ふ。

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小さな公園は随所にある