平家物語 巻第四 「還御 3」

2022-08-07 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 7 月 10 日>(仏滅 壬辰 八白土星立秋 Dennis Denise 第 31 週 第 26849 日

 

それからは上皇の周りに人が集まって、ちょっと園遊会の様な雰囲気といふか、リラックスした感じになった。上皇は「あの白い衣をまとった内侍(厳島の巫女)は邦綱卿に心を寄せてをるな」と言ってお笑ひになると、大納言は「そんなことはありませんよ」と抗弁する。そこへ文を持った美女がやって来て、「五条大納言どのへ」と言って差し上げた。「やっぱり」とばかりに満座は興味を示した。大納言はその文を手にとって見ると

 しらなみの 衣の袖を しぼりつゝ

 君ゆへにこそ 立ちもまはれね

上皇は「やさしうこそおぼしめせ(なかなかやるではないか)この返事はあるべきぞ」と言って、すぐに御硯を用意して大納言にお渡しになった。大納言の返事には

 おもひやれ 君が面かげ たつ浪の

 寄せくるたびに 濡るゝたもとを

こんなことがあってから、京を目指して旅を続けて備前国・小嶋の泊(岡山県児島郡)にお着きになった。

立秋と 如何で知るらん 鳥渡る