床屋へ行く

2021-04-27 (火)(令和3年辛丑)<旧暦 3 月 16 日> (赤口 乙巳 三碧木星)満月 Engelbrekt   第 17 週 第 26372 日

 

町で人とすれ違ふことがあると、相手の目は僕に「この町にも床屋はあるのだよ。なんだいその髪は」と言ってゐるような気がする。もっと身近な同居人は「私が切ってあげようか」とおせっかいなことばかり言ふ。そんな毎日に耐へられなくなって、たうとう今日は床屋へ行った。前の人がちょうど済んだところで、待ち時間ゼロであった。密は自づから避けられた。床屋のおっさんは僕の髪を見てちょっとギョッとしたようだった。家計簿を見ると、前回床屋へ行ったのは去年の1月24日であった。その頃はまだコロナは中国などの遠い国に流行の兆しがある程度にしか認識してゐなかった。実に1年3ヶ月ぶりの床屋である。これだけ放置すれば髪は伸び放題に伸びる。人となるべく接触しないようにといふ表向きの用心の陰で、実は僕は髪を伸ばしてみたかったのだ。だが、髪だけ伸ばしてもやはり仙人にはなれない。しわくちゃの老人になるばかりだ。いっそ坊主にしようかとも思ふのだが、スラッと形の良い頭でないので、それも躊躇はれる。結局普通に刈ってもらふことになった。床に長い白髪がまとまってフワッと落ちる。美しい。自分の肌にまだ付いてゐる間にそんなことを言ふとナルシストになってしまふが、身を離れた後ならいくら褒めてやっても良い筈だ。「ああ、美しい髪よ、これまでありがたう」。床屋のおっさんはそんな美しい髪を惜しげも無く箒ではいて「200 クローネだよ」と言った。

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桜越しに見える Nyköpingshus