美しい朝

月 旧暦 12 月 20 日 先勝 戊辰 二黒土星 Agata Agda V06 25199 日目

母を亡くしたのはいつのことですかと聞かれたら、暗算が苦手な僕でもすぐに答へることができる。何しろ、僕の還暦の誕生日の夜は葬儀会場の母の棺の横で過ごしたから、年齢から 60 を引けば良いのだ。僕は冬彦さんに負けないほどのマザコンで、それは、僕に言はせれば、それだけ母の深い愛情のもとで育ったからである。母が僕の還暦の誕生日に逝ったのは偶然だが、その日まで精神力で生き続けたのかもしれないとも思ふ。母は僕の還暦のめぐり来たった日に、僕の人生の再生を祈念しつつ身罷ったのだと信じてゐる。であるから、この第二の人生は大事にせねばなるまいと切に思ふ。それは単なる安心・安全祈願の心とは一線を画すべきものと自分に言ひ聞かせてゐる。母は、僕が高校を卒業した後は、父と祖母と三人の暮らしであったが、1982 年に祖母が、1986 年に父が他界して、その後は一人暮らしになった。追ひ打ちをかける様にその翌年に僕が会社を辞め、日本を離れてスウェーデンに行き、もう帰って来ないなどと言ひ出すものだから、母は寂しかったんだと思ふ。まもなく東京都下に住む姉の元に身を寄せてくれる様になって、僕は本当に安心した。そんな母がなくなったのは 9 年前の今日のこと。立春は過ぎたけれども、今朝の気温は氷点下10度、残雪が春の眩しい光を受けて、こちらでは美しい朝となった。