今川節からの手紙(17)

日 旧暦 8月18日 先勝 癸卯 九紫火星 Orvar V37 24683 日目

今から89年前に、今川節作曲楽譜第18号が発行された。曲名は、濱田 廣介作詞「月夜の兎」。以下はその手紙の部分の転載である。

「作曲楽譜」第十八号を作って    今川節

○「月夜の兎」について ー はじめはA♭調に書いたのだが後にB♭に移調した。しかし「月夜の晩なら」の ばん の音Gが高くて歌ひにくいと思はれたら元の調にうつして歌って下さってもよい。全体をやや早く、かるく、愉快さうなうちにも月夜の山の静かな空気を思はせるつもりで歌っていただきたい。伴奏も兎のピョンピョンはねる様をあらはすつもりでかいたからそのつもりでひいていただきたい。

○ 今月から本楽譜について一ヶ月五銭の郵税をいたゞく事にした。しかし之は是非にとはいはない。たゞ、だして下さる方だけからいたゞく。ー 自分は貧乏だ。一冊の音楽書を買ふのにも二、三ヶ月前から用意せなけれバ買へない。で 本楽譜に要する費用だけでもなくしたら(少くしたら)少しは はやく音楽書なり楽譜なりがかへると思ふからだ。どうか御援助の意味で御送付を乞ふ。もっとも之は金もうけでハないから全部の紙代と郵税をさしひいて残金が生じれバ それハ 全部自分の教会に献金する。

昭和弐年九月十七日印刷 同九月十八日發行

發行所 發行者 福井県丸岡町巽 今川 節