今川節からの手紙(10)

水 旧暦 10月14日 大安 乙巳 一白水星 Katarina Katja V48 24385日目

89年前(大正15年11月25日)、今川節作曲楽譜第10号が発行された。関東大震災から3年が過ぎ、大正天皇はこの年のクリスマス12月25日に崩御。この曲はそのちょうどひと月前の作品であり、今川節の大正時代最後の作品である。クリスマスの後にはすぐに新年が来るので、昭和元年は数日しか無かったことになる。銀行に働きに出る今川節は忙しい毎日であったろうと思ふ。今月の曲名は斎藤潔作詞「天軍頌樂」、クリスマスにちなんだ曲である。楽譜には次の様な手紙が添へられてゐる。

「天軍頌樂」について 今川節

十一月号にはクリスマスの曲を書きたいと思ひ、そのためこの歌詞を探し出して作曲に取りかゝったのが十月三十日でした。そうして十一日の間(と言っても毎夜二時間程ですが)全然外の作曲をやめてこの曲に専心しました。

しかしまだ聖歌曲作曲に經驗のない、そうして貧しい心と貧しい知識しか持たない私にはやはりこんなものしか生れて來ませんでした。

尚この曲の合唱部を書くためには草川信先生の「聖夜」が大いに参考になった事を申し添へておきます。

私はこの曲を私の愛するシピ・ホームス先生、坂本牧師及仝夫人にさゝげます。

おしらせ其他

來月はクリスマスの準備やら其他のことで私にとってもっともいそがしい月故、楽譜は十二月号を休刊にします。一月号はやはり一月の中旬に出します。兎も角、十号迄一度のとゞこほりもなく出すことが出來、しかも私として割合に大きい作品で今年の楽譜を終ることが出來ます事をほんとうにうれしく思ひます。と同時に今号までつゞけて御覧下さって色々御批評や御注言を給はった皆様に私は心からの感謝をいたします。今後も相変らず御指導下さいます様幾重にもお願ひいたします。

大正十五年十一月二十一日印刷納本 大正十五年十一月二十五日發行