今川節からの手紙(13)

土 旧暦 3月17日 先勝 乙亥 六白金星 Georg Göran V16 24535 日目

89年前(昭和2年4月23日)、今川節作曲楽譜第14号が発行された。曲名は「山の春」(富原義徳 詩)と「鶉」(北原白秋 詩)、以下はその手紙の部分の転載。

作曲楽譜 第十四号を作って 今川 節

一週間ばかり病気をしましたので、十七日に出す筈の楽譜が本日(二十三日)迄のびてしまひました。

先日の楽譜については多くの方から色々のお言葉をいただいてありがとう御座いました。今後も時々あゝした特別号の様なものを出して、かはった編輯の仕方をして見たいと思ひます。

今月は混声合唱「山の春」と單声の童謡「鶉」の二曲を書く事にしました。「山の春」は昨年單声に作曲したものですが、合唱の方に適してゐると思って、今年の二月に合唱にかきかへました。伴奏はありません。「鶉」は巧拙は別として、私には割合すきな曲です。

野にも山にも春が一ぱいに満ちたのに、時間に余いうのない私はまだゆっくりそれさへ味はって居りません。でも今朝裏の川に顔を洗ひに出て、可愛いゝ雲雀の声を思ふ存分きゝました。それだけでも私にはもう春の気分の全部にひたった様な気持がしました。もっと書きたいのですが紙面がないので之で失礼いたします。

昭和二年四月二十三日印刷納本發行(非賣品)