原節子

木 旧暦 10月15日 赤口 丙午 九紫火星 満月 Linus V48 24386日目

昭和の大女優原節子が亡くなった。もう半世紀も前に映画界を引退したのに、テレビや新聞ではその死が大きく報道されてゐた。女優としての業績もさることながら、僕は映画界を引退した後の原節子の生き方に強く惹かれるものがある。どんな生き方であったか全く知らないので、それは勘違ひであるかもしれないのだけれども、その後半のひっそりとした暮らしぶりの方が、女優として華やかに過ごした前半の日々よりも充実してゐたのではあるまいかと思はれてならないのだ。静かに生きて来たその長い沈黙の事実は、何より饒舌にその生き方を語ってゐる様にも思ふ。心の内面に喜びを持つ人はきっと社交を煩はしく感じるのだ。おそらく誰とも連絡を絶ち、ひとりの暮らしに埋没する、そんな生き方ではなかったか。羨ましい生き方である。羨ましいと思ふ反面で、普通の人にはやはり真似出来ないわざであるとすぐに気づく。フェースブックとかツイッターとか、僕らは兎も角自分を発信する時代に生きてゐる。「コミュニケーションが大事だよ」と教へられた世代でもある。けれども、自分の本当にやりたいことを本気で追求するなら、「社会から離れたところで生きるのも良いものよ」と微笑の遺影が語りかけてゐる様な気がする。