江戸川乱歩の本

土 旧暦 8月17日 赤口 壬寅 一白水星 満月 Hildegard Magnhild V37 24682 日目

江戸川乱歩怪人二十面相を読む。昭和39年にポプラ社から刊行された本で、当時が懐かしい。思はず怪盗のセリフを復唱してみたりする。巻末に「本書の文中に現在においては一部不適切と思われる表現がありますが、時代的背景に鑑み、作品の芸術性を尊重する立場に立って、発表時のまま掲載しています。」と但し書があった。最近の復刻本にはこの様な但し書をつけたものが多い。僕にはどの部分が不適切であるのかよく分からない。現代は半世紀前に比べれば、差別語が随分制限される社会になった。それが「時代的背景に鑑み」といふことと思ふ。それはそれで社会としては良くなったのかもしれないし、一部にはまだまだ世の中に差別語が多すぎると感じる人も多いかも分からない。けれども小説の世界ではそれがやや行き過ぎではないかと僕には感じられる。今の作家の人たちは何かを表現する時に不自由を感じないのだろうか。個人を特定して傷つける訳でもあるまいし、もう少し幅広い表現を許容する自由な空気が世の中にあっても良いのではないかと思ふ。表向きに差別語が使用制限される一方で、実際の差別はむしろ進んでゐることはないだろうかと、むしろ、そっちの方が心配な気もする。