イボのその後(5)

金 旧暦 7月24日 赤口 庚辰 五黄土星 Östen V34 24660 日目

僕は日本の会社に14年、転職してスウェーデンの会社に27年近く勤めて、サラリーマン生活といふものを長く体験した人間であるので、病院の人が電話の向かうで「それは医学的に根拠のある治療法ではありませんね」と言った気持ちはよく分かる。もし自分が相手の立場だったらやはり同じことを言ふしかなかったかもしれない。けれども、一患者の身になってみると、たとい「医学的に根拠のない治療法」であったとしても、手術や入院をせずに治ってくれるなら、こんなにありがたいことはないのである。医者から見れば、できてしまったイボを取るのに、如何に上手く手術をこなすかが最大の関心事であるのに対し、患者から見れば、かうなった原因はどこにあったのか、原因を取り除くにはどうしたら良いのかが最大の関心事である。そこにはどうしても向かうからは見えない考へ方のすれ違ひが起きるので、患者は医者に言はれたことであっても、そのまま鵜呑みにせずに、自分のなかでじっくりと考へてみる必要もあるのではないかと思った。今回は、自分ひとりでは考へられなかったけれども、姉の勧めに従ったことで、考へるヒントを与へられたことになる。病院の方では、ともかくも検査をして、悪性のものではないと診立てていただいて、さてこのイボを手術で取り除くかどうかは、患者が望むなら手術しませう、といふ状況であったから、患者である僕が「手術を受けたくありません」と言へばそれだけで済む状況であった。手術を受けずに済む様になって本当に助かったと思ふ。イボは今日のところ、まだ残ってゐる小さな塊が少しグラグラして崩壊しかかってゐるところである。