ベトナムの風に吹かれて

土 旧暦 9月5日 先勝 丙寅 四緑木星 Antonia Toini V42 24346日目

種々の動画配信サービスやDVDが氾濫してゐる現代で、映画館に足を運んで映画を見る人は少ないのかもしれない。だが、映画館の暗闇に入って、社会からしばし隔離されて、集中して映画を見るのは現代では実に贅沢な時の過ごし方である。昨夜のラジオ深夜便で、半分寝ながら聞いたのであるが、「ベトナムの風に吹かれて」といふ映画が、今日封切りであることを知った。一旦見たいなと思った映画でも、いつか見に行かうと思ひつつ知らぬ間に時が過ぎて、忘れてしまふことはよくある。であれば、封切りのその日のうちに見るのもひとつの選択であるなと思ひ、けふは意を決してバスで福井へ出かけてこの映画を見た。映画館は立派なのであるが、本日の3度目の上映で、数百人は入りさうな会場に観客はなんと僕一人であった。それで余計贅沢な気分でこの映画を見た。僕は日本とスウェーデンを行き来してゐるが、よその国のことは何も知らない。海を渡って頑張る人の体験談は興味深い。見知らぬベトナムの風景も映画で見てみたいと思った。ハノイ日本語教師として働く主人公の、父の死別の後、少し認知症の進んだ母をベトナムに引き取って、その生活の様子を描いた映画であった。認知症の人が、住み慣れた地を離れて、しかも外国に暮らしては、症状を悪化させるのではないかと思はれがちであるが、その様な一般論では説明できない状況も生まれうることが、映画を見るうちにわかった。