便利な社会

土 旧暦 10月1日 仏滅 丁酉 九紫火星 新月 小雪 Cecilla Sissela V47 24028日目

ヨーロッパでの日本のテレビ放送JSTVを時々見る時がある。こないだソファに座ったらNHKアーカイブスの「あの人に会いたい」と云ふ番組がかかってゐて、経済学者の宇沢弘文が出てゐた。「今の日本は人の心が荒れてしまった。昔の心を取り戻すことが大事だ」と云ふ内容のことを言ってゐた。もし著名な作家や詩人が同じことを話したとしたら、僕らは「その通りでせうね」と答へる他は無いだけだが、数理科学を極めた経済学の大家の口からこの様な語りかけを聞くと、どこか身につまされる様な感じを受ける。一般に「便利で豊かな社会になればなるほど、人の心は腐敗する」現象は避けられないのかもしれない。実際、この半世紀を振り返ると、僕らの生活様式は大きく様変はりして、本当に便利な世の中になった。この便利さは後退させたくないと思ふ。となると心を取り戻す作業は難しい目標ではないのか。けれども他方では僕は楽天的なことも思ふ。即ち、どんなに世の中が変はっても、人間の生き方の本性は万葉時代の昔から変はってゐないのではないかと云ふことである。人の心のうんと奥底に眠ってゐる何かは昔も今も変はらないのではないか。そこに僕は一縷の望みをつないで生きてゐる。