おもてなしの心

金 旧暦 7月20日 友引 戊午 九紫火星 Stella Estelle V33 23928日目

スウェーデンでも北に行けば行くほど親切で人柄の良い人たちが住んでゐる気がする。だから北へ向かって旅をする時はどこか安心である。これは北へ行くほど人口が少ない事とも関連してゐると思ふ。人間が人間らしく生きるためには人口がある程度以上過密になってはいけないのだとも言へるかしれない。ものの生産と消費サイクルの効率は人口が集中してゐた方が高く、その分だけ便利な暮らしが出来るが、あまり集中しすぎると人間らしい生き方が難しくなる。その中間の最適な密度に人口がおさまる様に調整する事が大事と思ふ。その点から言ふと東京の一極集中は明らかに行き過ぎである。東日本大震災後、さらに集中が加速してゐる様である。「絆」とか「花は咲く」とか歌ひながら、果たして人は本当に災害から何かを学んでゐるのかと疑問に思ふこともある。

ところで旅の途中、Ljusdal と言ふ町のガソリンスタンドでリンゴを買った。お店の人は洗ひませうかと言って、レジの中で後ろ向きになって調理台の様な場所でそれをきれいに洗って、またこちらに振り向いて軸の先をつまんで渡してくれた。感激であった。これは多分、従業員の接客マニュアルにその様にしろと書いてある訳ではなく、会話の中でごく自然にその人の人間性が出たのだと思ふ。それは大人になるまでの間にその人が身につけた清潔感とおもてなしの心と言っても良い。もしも、若い人が皆、学校に居る時からその様な心を育んで社会に出るなら、例へば日本のコンビニ等にあるらしい接客マニュアル等は最初から不要ではないかと僕には思はれる。おもてなしの心はマニュアルを読んで身に付くものでなく、人との相互の心のやり取りの中で自然に現れるものとも思ふ。イノベーションとか起業家精神とかこの頃はやりの教育テーマに僕はついて行けないが、普通の人にとっては、人間として社会で生きるためにはどの様な知恵が必要かを教へてもらった方が社会に出てから役立つのではないかと思ふ。そんなことを思ひながら洗ってもらったりんごをかじった。