ならぬことはならぬものです

火 旧暦 12月4日 先負 辛巳 九紫火星 Laura Lorentz V3 23352日目

「八重の桜」という大河ドラマが始まって、会津藩に伝わる「ならぬことはならぬものです」という言葉が放送されたりした。小学生が大声で唱和するのを聞くと、ちょっと頼もしい気もする。良い言葉であると思うが、さてこの言葉の意味するところを僕は正確に理解しているだろうか。理解のコツは二つあると思う。「こと」と「もの」の違いを知ることと、「なる」という動詞の語感とである。「こと」も「もの」も英語で言えばsomethingかもしれない。が、日本語における用法は異なる。「ならぬものはならぬことです」とは言えないことを思えばあきらかであろう。「そういうことよ」と言えば"That's it." で良いかもしれない。「そういうものよ」と言えば"That's something you have to obey."みたいな意味がある。それはしかし、例えば我儘な父親が子に向かって、親の命令だから従え、という意味ではなく、もっと普遍的な、人間の力では動かすことの出来ない摂理によって動かしえない時に「そういうものよ」というのだと思う。「なる」という言葉は「可能である」「かなう」という意味だと思うが、そのもとの意味としては、岩波古語辞典によると、時が自然に経過していくうちに、いつの間にか、状態・事態が推移して、ある別の状態・事態が現れ出る意味、と書かれている。ここにも人間の意志の介在を許さぬ感じが秘められている。ことがなる時は人間の意志に関係なく現れ出でるものであり、ならぬ時は人間は介入できない。そういうことを言っているのだと思う。人によっては、ごちゃごちゃ言わずに「長いものに巻かれろ」「無条件に従え」みたいな意味に取る人もいるかもしれないが、この言葉は決して民主主義の原則に異を唱えているのではないことを思うべきであろう。