夏の月

日 旧暦 閏3月16日 赤口 丁卯 七赤金星 満月 Marit Rita 5 i påsktiden V18 23098日目

昨日は早く仕事を切り上げた。玄関を出るとまだ薄明の残る空に月がかかって、ひときわそれが大きく見えた。月は昔から歌に詠まれている。「我身ひとつの秋にはあらねど」の歌に代表されるように、あるいは「名月」が中秋の季語であるように、月は古来秋のものとされているが、春の朧月夜にはまた別な風情がある。「月やあらぬ 春や昔の春ならぬ」、には春の月がうたわれている。この歌にもなぜか「我身」という語句が出てくる。昔の人は月と我身との関係を大事にしたんだと思う。結局四季を通じて月は昔から人々の心の友、旅路の友であった。このように書くと、月の美をめでる心は日本のものと思いがちであるが、正直な告白をすれば、僕は月の本当の美しさを知ったのはスウェーデンに渡ってからである。澄み渡る空、地表すれすれの森の木立に触れんばかりにかかる月を見た時、そこに浮いていることが奇跡のようで、それは今にも地上に落ちはしまいかと危ぶまれるほど大きかったものだから、息をのむほど感動したことがある。それは冬の月であった。昨夜の月はその風景を思い起こさせるほどであったので、思わず歩を止めて見入ったものだった。